獣の奏者 (講談社文庫) 上橋菜穂子 感想

獣の奏者 (講談社文庫) 上橋菜穂子 感想

2014/12/22 21:31 neputa

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あらすじ

リョザ神王国。闘蛇村に暮らす少女「エリン」は、母と同じ「獣ノ医術者」を志す。彼女は人や獣と深く関わりあいながら成長し未来に希望を切り開いていく。
I 闘蛇編、II 王獣編、III 探求編、IV 完結編の全四巻からなる大長編ファンタジー作品。

読書感想

自然と人との関りを壮大な世界観で描くファンタジー

以前、十二国記という作品をアニメで見た時も、この世界とは異なる別世界をよくもここまで詳細に描けるものだと驚愕したが、本作でも同様であった。
当初二冊で完結の予定ということで、二巻王獣編の終わりで著者のあとがきがある
そこで以下のように語っている。
決して人には馴れぬ孤高の獣に向かって、竪琴を奏でる娘。ーもう何年もまえに、そんな光景が、突然心に浮かんできて、離れなくなりました。

言葉や習慣、自然界のあり方も、自分が暮らすこの地球とは異なる異世界が広がっており、これがひとりの人間から生み出されるということが不思議でならない。
実際のそのような世界が存在し、その記憶が何らかの形で降りてくるのかしらと想像してしまう。

獣の奏者の世界には、闘蛇、王獣といった獣が人間と深く関わりを持つ存在となっている
この世界でも、やはり人間は業の深い生き物であり、気高い獣を政治の道具として扱う
エリンは、何故生き物がそのようにあるのかを医術師という仕事を起点に探求し、やがて自分の家族、歴史、広い世界を通じ、過去に祖先たちが犯した過ちを乗り越える。

ファンタジーを鏡として現実世界を知る

異世界ではあるが、人間が存在することで、その世界をわかることができる。
人間という生き物の存在感はすごいのだとあらためて感じる。
しかし、エリンの成長の末至った境地により、人間もまた群れをなして生きる獣であり自然界の一部であると、説得力をもって描写される。
タイトルの「獣の奏者」の「獣」には、人間も含まれているのだと勝手に解釈をする。

著者の力量であると思うが、異世界であるにもかかわらず、王獣の毛並みや羽ばたく姿、エリンの緑色の瞳、異世界の風景などが、すごく美しさが目の前に広がりうっとりする。
人間の業の深さもある意味、獣の本能であり、全てをひっくるめて世界は美しいと、エリンが感じさせてくれる。

これほどまでに壮大な物語を綴り、最後にしっかりと希望を描き出した著者にただただ敬服する。


著者について

  • 本書より
上橋 菜穂子 1962年東京都生まれ。川村学園女子大学特任教授。オーストラリアの先住民アボリジニを研究。1989年に『精霊の木』で作家デ ビュー。野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞をダブル受賞した『精霊の守り人』を始めとする「守り人」シリーズ、『狐笛のかなた』(野間児童文芸 賞)、『獣の奏者』、『獣の奏者 外伝 刹那』ほか著書、受賞多数。2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。2014に「児童文学のノーベル賞」といわれる国際アンデル セン賞作家賞を受賞。

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