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『悪と仮面のルール』 中村文則 【読書感想・あらすじ】

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悪と仮面のルール 装丁

あらすじ

邪の家系を断ちきり、少女を守るために。少年は父の殺害を決意する。大人になった彼は、顔を変え、他人の身分を手に入れて、再び動き出す。すべては彼女の幸せだけを願って。同じ頃街ではテロ組織による連続殺人事件が発生していた。そして彼の前に過去の事件を追う刑事が現れる。本質的な悪、その連鎖とは。日本人初「デイヴィッド・グディス賞」受賞。
――本書より引用

感想

人間が持つ「悪意」をテーマにした作品

続けて中村文則さんの作品を読んだ。

本作は殺人の話、そして究極の悪についての話である。

著書はこの作品の前も後も、人が意識的に抱く「悪意」というものをひとつのテーマとして描き続けている。

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意識的に同種を殺す「人」という種について

この地球上において、共食いの現象は広く観察されているが、人間ほどに同種を殺す生物はいないようだ。

この世界では、罪を許すことの出来る存在は、神しかいないとされていますから。人間を遥かに超越した神だけが、それをゆるすことができる
――本書より引用

人間が神を求め宗教を生み出したのは、同種を殺しあう罪の意識に救いを求めてのことだったのかもしれない。

自分は、人を殺したことは無い。

しかし、本書を読むと自分は同種を殺す人間という種なのだと強く自覚させられる。

何故、人を殺してはいけないのか?

ときに報じられるこの問いは、

自分たちは地球上で最も同種を殺す希少種である、そのことを強く自覚させることで答えを感じることが出来るのではないかと思う。

子供のころに大人たちから言われた「人は人を殺してはならない」という言葉が、本作を通じて初めてストンと腹の底におさまったように感じている。

参考文献にあった書籍を読んでみた

本書の参考文献にあったものを2作ほど読んでみた。

経済社会がもたらした悪とも言える「ヤクザ」と「軍事ビジネス」を描いた作品であり、とても興味深い内容だった。

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映像化について

2014年に監督:松本准平、主演:柳楽優弥で『最後の命』が映画公開されたが、本作品も監督:中村哲平、主演:玉木宏で映画化されるとのこと。(2018年公開予定)

玉木宏、悪に染まる…「悪と仮面のルール」映画化 | cinemacafe.netfacebooktwitterhatebuPocketInstagramInstagramInstagram

日本国内のみならず、アメリカをはじめとした海外でも注目を集める日本人作家・中村文則の傑作「悪と仮面のルール」が…

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初期作品に比べるといくらかエンタメ要素も加わるようになったとはいえ、文学色が強い小説が映画原作として選ばれるのは喜ばしいことだと思う。

著者について

中村 文則(なかむら・ふみのり)1977年愛知県生まれ。福島大学行政社会学部応用社会学科卒業。小説家。2002年、『銃』で新潮新 人賞を受賞しデビュー。2004年、『遮光』で野間文芸新人賞、2005年、『土の中の子供』で芥川賞、2010年、『掏摸』で大江健三郎賞を受賞した。 その他の著書に『悪意の手記』『最後の命』『何もかも憂鬱な夜に』『世界の果て』がある。
――本書より引用

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※書籍が出版された順

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